<世界最高の医療のおかげで感染者ゼロと主張してきたが、3月末のコロナ対策講演会で初めて、感染者が複数確認されたことを住民に認めていた> 米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は4月17日、北朝鮮の当局者が3月下旬頃に、国内の3つの地域で新型コロナウイルスの感染者が報告されたことを認めていたと報道した。 北朝鮮は対外的には感染者の存在を認めておらず、国家衛生検閲院の朴名帥院長は4月1日にAFPの取材に対して、「これまでのところ、我が国では新型コロナウイルスの感染者は一人もいない」と主張。「我々は北朝鮮に入国する全ての人について検査や検閲を実施し、徹底した消毒作業を行ってきたほか、陸・海・空の全ての国境も閉鎖するという予防的措置を取ってきた」と述べていた。 だが実際には、北朝鮮政府の複数の当局者が3月末に一般市民に向けて新型コロナウイルスに関する講演を行い、同国は世界で最も感染者の数が少ないと主張していたという。RFAが北朝鮮北部にある両江道の住民(匿名)に聞いた話として報じた。 この住民はRFAに対して、政府当局者が同地域の全ての住民を対象に「元帥様の方針貫徹のために新型コロナ防疫プロジェクトに団結して取り組もう」と題した講演を行ったと説明し、「講演者は、国内で複数の感染者が確認されたと述べた」と語った。 「3地域だけのはずがない」 政府当局者は、北朝鮮国内で感染者が確認されているのは、平壌と黄海南道、咸鏡北道の3つの地域のみだと述べたという。だがこの住民は「地図を見ると、咸鏡北道は一番上に、黄海南道は一番下にあり、平壌はその中間にある。それなのに、感染者がこの3カ所でしか出ていないなんて信じられない」と語っている。「ウイルスが国の最北端から最南端まで広がったなら、もう国内の全ての地域に広がっているはずだ」 さらにこの住民は次のように語っている。「政府の当局者は、私たちが朝鮮労働党の検閲ガイドラインをきちんと守らなかったために、経済に深刻な損害がもたらされたと言っていた。そして、さらなる損害を阻止するために、一丸となって新型コロナウイルスとの戦争に勝利しようと呼びかけた」 またこの人物によれば、この政府当局者は、北朝鮮には「世界で最も優れた医療制度が整っているため、世界で最も感染者が少ない」とも述べていたという。 また別の情報筋がRFAに語ったところによれば、講演会は平壌でも実施され、国内の感染状況については両江道での講演会と同じ説明が行われた。 「講演者は私たちに、優れた医療制度と医療政策のお陰で、感染例の最も少ない国に暮らしていることを誇りに思うべきだと言っていた」とこの情報筋は述べている。 <参考記事>新型コロナウイルス、なぜ再び陽性になる? 韓国で進む研究と新たな疑問 <参考記事>国連「アフリカ、新型コロナウイルスで30万人死亡・2900万人が極度貧困の恐れ」 ===== それでも平壌での講演会の出席者たちからは、政府に批判的な声が上がったという。「出席者たちは、金正恩朝鮮労働党委員長は日々の生活に苦しんでいる国民のために何もしてくれなかったと言っていた。党の検閲ガイドラインが適切に実施されなかったことを(政府ではなく)国民のせいにしている、と批判していた」とこの人物は語った。 北朝鮮と国境を接する中国と韓国ではいずれも、新型コロナウイルスの感染拡大の早い時期に爆発的に感染者が増えていたことから、「感染者ゼロ」という北朝鮮の主張には疑念がもたれていた。 2月には、国連が北朝鮮での新型コロナウイルス感染拡大を阻止するために、一部の品目について制裁対象から除外する決定を下したが、北朝鮮はこれを拒否していた。北朝鮮の今の医療システムでは、感染拡大に対処しきれないと懸念した国連は、ゴーグルや体温計、聴診器などの医療物資について、北朝鮮への搬入を制裁の対象外にする構えだった。 朝鮮中央通信(KCNA)によれば、金は2月に当局者らとの会議の中で、「感染症が流入し得る全ての経路を完全に封鎖し、検査態勢と検疫態勢を強化する」よう指示。これ以降、同国の国境は封鎖状態が続いている。 WHOには依然「感染例の報告なし」 さらに北朝鮮は、国外との鉄道および航空便の往来をすべて停止し、空港や港などでの検査を強化。ロイター通信によれば、発熱などの症状がある者は全員、1カ月にわたって隔離される。またKCNAが4月18日に報じたところによれば、北朝鮮の当局者らは「陸・海・空の国境の完全封鎖に加えて、ほかにもまだ感染症が入り込む可能性のある隙間はないかを検証している」ということだ。 世界保健機関(WHO)は4月上旬、北朝鮮の保健省から(国内の感染状況について)「毎週報告を受けている」ことを明らかにし、平壌の研究所には、国民の検査を行なえるだけの対応能力があるとしていた。WHOによれば、同国内では現在も検査が続けられており、500人以上が隔離状態にある。 平壌に駐在するWHOのエドウィン・サルバドール事務所長はロイター通信に対して、「北朝鮮では4月2日までに、外国人11人を含む計709人が新型コロナウイルスの検査を受けた。感染例は報告されていない。現在、外国人2人を含む509人が隔離状態にある」と述べている。「12月31日以降、外国人380人を含む2万4842人が隔離を解かれている」 (翻訳:森美歩) ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年4月28日号(4月21日発売)は「日本に迫る医療崩壊」特集。コロナ禍の欧州で起きた医療システムの崩壊を、感染者数の急増する日本が避ける方法は? ほか「ポスト・コロナの世界経済はこうなる」など新型コロナ関連記事も多数掲載。