<作品への思い、監督の情熱、仲間との絆...... 不朽の名作の撮影秘話をバル・キルマーがたっぷりと> 俳優バル・キルマーの代表作と言えば、1986年の映画『トップガン』だろう。数々の出演作(『トゥームストーン』『ウィロー』『バットマン フォーエヴァー』など)の中でも特に大きな位置を占める作品だ。当然、4月に出版された本人の回顧録『アイム・ユア・ハックルベリー』にも、当時の撮影秘話が登場する。 永遠にノスタルジーをかき立てる大ヒット作(テーマ曲「愛は吐息のように」を聞けば誰でもぐっとくるはず)だが、何とキルマーは当初まるで興味がなかったとか。そんな衝撃の告白をはじめ、回顧録には興味深い話や笑える話、気になる話題が満載だ。そのあらましを紹介しよう。 ■ 渋々オーディションへ キルマー自身は『トップガン』のオーディションにも出演にも全く興味がなかった。「とにかく片っ端からハリウッドの人気映画監督に会え」とエージェントに言われ、仕方なく受けたら主人公のライバルの「アイスマン」役に一発で合格。これには参った。やりたくなかった。 監督のトニー・スコットはキルマーの落胆を見抜いたようで、次のように声を掛けたという。「脚本は確かにまだまだだが、これから良くなる。まずはジェット機を見てくれ。ぐっとくるはずだ」 ■ 監督の熱い思い キルマーによれば、スコットは『トップガン』のセットとコンセプトに子供のようにはしゃいでいた。キルマーをアイスマン役に決めた直後、人であふれ返る廊下でジェット機の音をまねたほどだ。 撮影現場でも、スコットの情熱は際立っていた。「トニーは撮影プロセスを愛し、現場のエネルギーを愛し、登場人物たちを愛していた。全てがトニーの活力源だった」と、キルマーは書いている。「ジェット機が飛び立つたびに、トニーは大興奮だった。こっちが投げやりにセリフを言っても、飛び上がらんばかりに喜んだ」 ■ オフには悪ノリも 撮影のない日は羽目を外した。あるとき、泥酔した仲間を乗せて車を走らせていて、四差路交差点に差し掛かった(信号は全て赤)。交差点の中心部に入り、完全な円を描いて猛スピードでスピンした瞬間、パトカーに出くわした。『トップガン』というクールな映画の撮影に遅刻しそうで、と釈明すると、警官は違反切符を切らずに通してくれた。 主演のトム・クルーズは仲間に加わらなかった。演技に専念したかったのだろうと、キルマーは言う。 ===== ■ クルーズに「贈り物」 だがクルーズもキルマーたちの悪ノリの標的に。「彼に超高級シャンパンを贈ったが、ボトルをだだっ広い場所に隠し、ヒントを与えて探させた。物陰から見ていると、クルーズはでかい木箱をオートバイまで引きずっていった。アイスマン流の演出は感謝されずじまい。打ち解けたかったが、『氷(アイス)』は解かせなかった」 ■ 作品への愛着 撮影が進むうちに作品に愛着が湧いたという。撮影中は「心底楽しみ、多くを学んだ」。 ■ アイスマンの心の奥へ アイスマンは確かに「嫌な奴」だが、キルマーはその理由を探った。俳優らしく、役の心の奥に入り込もうとした。 「そればかり考えていたら、休憩中に実際に見えたんだ。マクベスがバンクォーの亡霊を見たように、アイスマンの父親が。(これは自分の想像だが)理想の息子だと証明しなくては、とアイスマンに思い詰めさせた男の姿が」 <本誌2020年5月26日号掲載> 【参考記事】コロナ危機の今こそ見るべきパンデミック映画7選 【参考記事】ハリウッドとエンタメ業界を直撃した最悪のコロナ危機 ※画像をクリックするとアマゾンに飛びます2020年5月26日号(5月19日発売)は「コロナ特効薬を探せ」特集。世界で30万人の命を奪った新型コロナウイルス。この闘いを制する治療薬とワクチン開発の最前線をルポ。 PLUS レムデジビル、アビガン、カレトラ......コロナに効く既存薬は? =====