<中印国境紛争の死者は公式発表より多かったはずだと嘘を書いて「後悔している」と自白した映像も放送> 中国の南京市に住む著名ブロガーが、「英雄烈士保護法」で起訴された。中印国境地帯で2020年6月に発生し、複数の死者が出た両国軍の衝突について、中国政府の発表に疑問を呈したことを罪に問われたものだ。中国では最近刑法が改正され、国家の英雄や国のために命を落とした人々の名誉を傷つける行為が違法とされたばかりで、このブロガーはこの法律が適用された最初の人物となった。 中国沿岸部にある江蘇省の省都、南京市の検察は3月1日、38歳の仇子明(きゅう・しめい/ Qiu Ziming)に対する容疑を明らかにした。中国当局はちょうどこの日から、同国が2018年に制定した英雄烈士保護法に基づき、個人を起訴することが可能になっていた。 仇は、2月20日に警察に身柄を拘束された。原因は、前日に仇が投稿した2つのブログ記事。その中で仇は、中印国境地帯にあるガルワン渓谷で2020年6月に起きたインド軍との衝突で、中国政府の公式見解以上に多くの中国兵が亡くなった可能性が高いとする見解を示した。 仇は中国政府が19日に初めて公表した軍の死者数に関して疑問を呈した。中国政府は、衝突が起きてから8カ月を経て初めて、戦闘のなかで将校1名が重傷を負い、兵士4名が死亡したと発表した。 「戦死者を嘲笑」 調査報道を行うジャーナリストとして活動していたブロガーの仇は、「騒動挑発」容疑で逮捕された7名のうちの1人。これは、「社会秩序を乱す行為」に対して最も頻繁に適用される、範囲の広い罪状だ。だが、南京市の人民検察院によれば、中国の刑法における新たな修正条項が3月1日に施行されたことにより、仇は今後、2020年に戦死した兵士たちの「名誉を損ない、嘲笑した」罪によって最長で3年の懲役刑に直面することになるという。 仇は2月19日、中国のソーシャルメディア微博(ウェイボー)の、自身のアカウント「辣筆小球(Labi Xiaoqiu)」において、「死亡した4名の兵士はみな、(将校を)救出しようとしていた。救出の任務を帯びた兵士たちが死んでいるのなら、命を救えなかった(兵士が)もっとたくさんいるはずだ」と投稿した。 一方、インド政府は、ラダック地方で起きたこの衝突の直後に死者数を発表しており、インド兵士20名が死亡したと明らかにしていた。これについて仇は、インド側がすぐに発表に踏み切ったのは、死者の数が中国より少なかったからだと主張した。 双方に死者を出した2020年の衝突以降、インドのメディアは、当局筋からの情報として、中国軍に最大で40名の死者が出たと報じていた。ただしこの数字は、これまで公式には確認されていない。 ===== 仇の罪状は1日、中国の国営放送CCTVでも報道された。中国における戦争の英雄の名誉を損なったことに関する罪が個人に適用されたのは、これが初めてのケースだ。 CCTVは、プライムタイムに放映される30分間のニュース番組『新聞聯播』のうち1分間を割いて、仇の「罪状」を伝えた。この番組は、中国全土のすべてのテレビチャンネルで同時放映されている。 映像には、鉄格子の向こうの尋問室に座っている仇が、自らの罪を2名の検察官に対して自白している様子が捉えられている。仇は、自らの主張は「事実に基づいてない」と述べ、自らの投稿は「(中国の)国境部隊のイメージに影響を与えた」と認めた。 「私はひどい罪悪感を覚えており、自らの行動を深く後悔している」と、2月26日との日付が入った監視カメラ映像で、仇は述べている。 「犯行時」にはなかった法律 ウェイボーは、250万人のフォロワーを持つ仇のアカウントについて、1年間の停止処分にした。また、仇に関連づけられている別のアカウント「球夜行」についても、同じく1年間の停止措置を取ると微博は述べている。 仇が住む南京市の検察当局は、仇の裁判がいつになるか明言しなかった。 中国の英雄烈士保護法を批判する人たちは、この法律が、中国政府の公式見解に疑問を呈する人たちを黙らせるために使われるおそれがあると指摘する。 上海在住の弁護士、呉紹平はラジオ・フリー・アジアの取材に対し、中国共産党は「自国民から言論の自由を奪っている」と批判した。 犯罪とされる行為を仇が行ったのが、改正刑法が施行された3月1日より前だったにもかかわらず、遡及的に罪に問うのは「憲法違反だ」と、呉は指摘した。 (翻訳:ガリレオ)